2017/12/26 耐震化 耐震・省エネ

第1回 【耐震・省エネ解説】耐震化、筋交い補強について。

熊本耐震改修研究所では、”熊本の家をより強くより美しく”をコンセプトに、長く愛され続ける木造住宅を目指して、住宅の耐震化と省エネ化を図っていきます。このブログでは、耐震化改修・省エネ化改修についての技術的内容や、分かりにくいところ、どんな方法があるのかな?など、みなさまのハテナを少しでも解決できるよう、解説していきたいと思います。

筋交い補強による耐震化改修

今回は、耐震化改修の中でももっとも普及している「筋交い補強」についてです。まずは、この筋交いについてその役割などを解説しますね。筋交いとは、木造住宅における耐力壁を構成する構造体の一部です。
絵で描くとこんな感じで、柱と梁に囲われた中にある斜めの木材です。

この筋交いは、建物に加わる横からの力(地震による力)に抵抗して、建物の構造を安定させています。絵にもあるように、引っ張られる力に威力を発揮しますので、建物の右からの力、左からの力にバランスよく配置する必要があります。

実際にこの筋交いに力が加わるとどうなるか、外からの力の方向(右とか左とか)によって、その筋交いの取り付く柱に、土台から抜けようとする力や、梁から抜けようとする力が発生します。そんな柱の抜けに抵抗するのがホールダウン金物と呼ばれるものです。また、筋交いと柱と土台や梁とをしっかり止め付ける金物を筋交い金物といい、筋交いの接合部の補強を担う金物です。これらがきちんと施工され、それぞれが持つ性能を発揮しないと、安全な建物にはなることができません。

古い建物は、安全基準も古い。

古い建物(1981年以前の建物)では、現在の基準(上の絵はほぼ現行基準)には至っておらず、筋交いはあるものの金物での補強などは、ほとんど見られません。当時の基準ではそれで良しとされていたので仕方ないですね。これまで多くの地震が日本を襲い、その大地震ごとに耐震基準が見直され、現代の基準へと変化してきました。現在の基準ですら、法律を守っているだけでは、危ういところがあるのも事実です。構造安全性を高めようとすれば補強方法はいくつもありますが、同時にコストもかかるため、どこまで補強するかの判断が大切なところです。

筋交い補強工事の事例

実際に筋交いの補強工事を行なったものをご紹介します。1977年築の木造平屋建ての住宅です。耐震診断を行い、耐震補強設計ののち耐震化改修工事を行いました。

古いお宅で見かける化粧ベニアの壁。この中に筋交いが仕込まれています。

壁を剥ぎ取ったところです。筋交いが現れました。

今回使う、筋交いと柱に採用した補強金物です。左側から筋交い補強金物、柱頭補強金物、柱脚補強金物、それぞれ耐震補強設計にて導かれた強度を有した金物になります。

筋交いを補強金物で補強した状態です。ここのお宅では、柱も筋交いも劣化がなく健全な状態であったため、この補強金物だけの取り付けで大丈夫でした。雨漏りやシロアリ被害などがあると、木材そのものの交換も発生することがあります。

補強部分の拡大です。うまく取り付けができました。

あとは壁の仕上げを元に戻すのですが、また化粧ベニアでは味気ないし、劣化も気になるので、無垢の杉板にて仕上げました。この後にオイル塗装にてフィニッシュです。

耐震化改修で長持ち住宅

これで、耐震化改修工事における筋交い補強が完了です。一軒の住宅でこういった壁の補強や、屋根の軽量化、梁や柱の補強などいくつかの補強要素を組み合わせて、建物の安全性を高めていきます。建物自体の強度は上がり、長持ちする家にはなるのですが、忘れてならないのは「長持ちさせたい」という住まい手の気持ちです。いくら建物を強くしても、壊そうと思ってしまえばいつでも壊せます。そうならないように、愛着持てるようにする改修提案が必要だと考えています。今回の杉板での仕上げには、そんな思いを込め、時が経つにつれ風合いが増し、愛され続ける住宅を目指してみました。

 

なんでも結構です!ご質問などございましたら、ご遠慮なくこちらからお問合わせください。心をこめてお応えさせていただきます^v^。

”最後まで読んでいただいてありがとうございます。ついでにfacebookのいいねや、twitterでシェアいただけると僕は大変喜こびますので、あとひと押し、何卒よろしくお願いいたします。”